玄関:靴を脱ぐ場所に、何を置く余地があるか
玄関のインテリアは、たたきの奥行きから人が通る60cmを引いた残りの床で決まります。日本の住宅の玄関ドアはほとんどが外開きなので、扉が開く弧は玄関の内側の床を取りません。
玄関に置くものは、置きたいものから考えると必ず行き詰まります。先に決まっているのは、たたきの広さと、上がり框の位置と、人が上がり降りするための通路です。この3つを図面に描いたあとに残る面積が、棚や鏡や置物に使える床のすべてです。部屋別のレイアウトで最初に決めるのが家具である他の部屋と違い、玄関では床の形のほうが先に決まっていて、置くものはその残りに合わせます。
玄関で最初に決めるもの
玄関ドアが外に開くため、その弧は玄関の内側の床を取りません。日本の住宅の玄関ドアはほとんどが外開きで、欧米の住宅がほとんど内開きなのとは逆です。外開きが一般的な理由は3つあり、玄関で靴を脱ぐ習慣(内開きだと脱いだ靴を扉が押してしまいます)、玄関のスペースを有効に使えること、気密性の高さです。
したがって、玄関に何を置けるかを決めるのは、扉の動きではなく、たたきの奥行きと上がり框です。たたきは靴のまま立つ土間の部分で、上がり框はそこから室内の床へ上がる段差です。棚も鏡も置物も、置ける床はたたきの上にあり、上がり框より内側は靴を脱いだあとの床になります。この2つを実測すると、置ける場所と置けない場所が先に分かれます。
玄関の内側で開く扉は、玄関ドアではなく、下駄箱の扉と、廊下や居室へ続く扉です。この2枚は玄関の床の上で開くので、その手前は空けておきます。
玄関の広さを数字でつかむには、たたきの部分を実測して畳と比べます。江戸間の畳は1枚が1.76 × 0.88m、面積1.549m²です。たたきがその半分に満たない玄関は珍しくなく、そこに通行帯を重ねると、残りは棚を1つ置ける程度になります。
玄関のレイアウト:何をどこに置くか
玄関で人が立って靴を脱ぐには、1人が通る60cmと同じ幅が要ります。荷物を持ったまま上がるなら75cm、2人が同時に出入りするなら1人が横を向いて90cmです。狭い玄関でこの帯を削ると、靴を履くたびに壁に手をつくことになります。
| 場面 | 必要な幅 |
|---|---|
| 1人が通る、1人が靴を脱ぐ | 60 cm |
| 荷物を持って通る | 75 cm |
| 2人がすれ違う | 90 cm |
賃貸のアパートやマンションの狭い玄関では、この帯を確保したあとに残る奥行きが、棚を置けるかどうかの答えになります。残りが20cmなら、置けるのは壁付けのフックか、奥行き20cm未満の板1枚です。玄関ドアが外開きである分、この残りが扉に削られることはありません。
玄関の幅も同じ引き算で読みます。たたきの幅から通行帯の60cmを引いた残りが、靴を並べられる幅です。並べられる足数は、その残り幅を靴1足の実測幅で割った数になります。狭い玄関の靴の収納を考えるときは、この足数を先に出し、床に出しておく上限を決めてから、入りきらない分の置き場所を決めます。入れ物を先に買うと、たいてい通行帯の60cmを削って置くことになります。
玄関に置く家具と、その寸法
靴箱の上に置けるものは、天板の奥行きに収まる大きさのものです。靴箱の上は、玄関で唯一、床を取らずに使える面です。玄関ドアが外に開くので、この天板が玄関ドアに削られることはなく、天板の奥行きと幅がそのまま使える面積になります。
- 測る。靴箱の天板の奥行きと幅を、壁から手前まで測ります。
- 引く。靴箱自身の扉が天板の手前を通る型なら、その範囲を消します。
- 置く。残った面の奥行きに収まる高さと幅のものを1つ選びます。
- 空ける。天板の手前5cmから10cmは空けておくと、物を落としません。
置物を並べるより、鏡を1枚と、鍵を受ける浅い器を1つに絞るほうが、狭い玄関では通行の邪魔になりません。靴そのものの収納が足りない場合は、玄関に入れ物を足すのではなく、収納の考え方と同じく、まず置き場所を決めてから入れ物を選びます。
鏡は、身長の半分の高さがあれば全身が映ります
平面鏡で全身を映すのに必要な鏡の縦寸法は、身長のちょうど半分です。身長170cmなら85cm、160cmなら80cm、180cmなら90cmで足ります。これは光の反射の幾何で決まる値で、鏡から何m離れても変わりません。狭い玄関で下がれないことは、全身が映らない理由になりません。
効くのは高さではなく取り付け位置です。鏡の上端が、目の高さと頭のてっぺんの中間に来るように付けると、上端から下端までに全身が収まります。幅も同じ比率で、映したい範囲の半分あれば輪郭が入ります。
| 身長 | 全身が映る鏡の最小の縦寸法 |
|---|---|
| 150 cm | 75 cm |
| 160 cm | 80 cm |
| 170 cm | 85 cm |
| 180 cm | 90 cm |
玄関の通路幅と動線
玄関の動線は、外の扉から靴を脱ぐ場所を通って室内の扉まで、1本の線で結ばれます。この線に要る幅が、1人で60cm、荷物を持つなら75cm、2人が出入りするなら90cmです。玄関ドアが外に開くぶん、この帯を削るのは扉ではなく、たたきに置いた物と、内側で開く扉の2つだけになります。
内側で開くのは下駄箱の扉と、廊下や居室へ続く扉です。この2枚は玄関の床の上で開くため、開ききった位置を床に写し取り、その範囲には物を置かずに空けておきます。動線を1本にまとめておくと、靴を脱ぐ人が立つ場所と、通り抜ける人の帯が同じ床を取り合いません。
玄関がキッチンと隣り合うとき
ワンルームや1Kでは、玄関を入ってすぐの廊下の片側にキッチンが並ぶ間取りがあります。このとき、玄関からの動線とキッチンの前に立つ帯が、同じ床の上で重なります。
重なった帯の寸法は足し算ではなく、大きいほうを取ります。人が通るだけなら60cm、調理している人の後ろを通るなら、2人がすれ違う90cmです。買い物を持って帰る動線でもあるため、荷物を持って通る75cmが下限になります。この帯を廊下に通したうえで、玄関側に靴を脱ぐ場所が残るかどうかが判定です。
玄関でよくある失敗
玄関で起きる失敗はほぼ1種類で、通行帯を残さないまま物を置くことです。起きるかどうかは、置く前の引き算で分かります。
狭い玄関で置くものを1つに絞る目安は、通行帯を引いたあとに残る床が1m²を下回るかどうかです。椅子を置くなら、座って靴を履くために正面へ足を伸ばす床が要り、そのぶん通行帯と重なります。棚を置くなら、上がり框より手前のたたきの奥行きに収まるものに限られます。マンションでもアパートでも、残った面積が同じなら答えは同じです。
広い玄関では逆に、通行帯を確保してもまだ余る床が出ます。その余りに椅子を1脚置けば、靴を履く場所と通行の帯を分けられます。リビングのレイアウトでソファの背後に通路を通すのと同じで、玄関でも人が止まる場所と通る場所を分けたときにいちばん広く使えます。寝室のレイアウトのように部屋の主役が決まっていない分、玄関は引き算の結果がそのまま答えになります。