賃貸のインテリア|傷つけずにできること

賃貸のインテリア:退去時に戻せる範囲で、どこまでできるか

賃貸のインテリアは、退去するときに元へ戻せる範囲の中で、江戸間の6畳なら2.64m × 3.52mという実寸に家具を収める作業です。

賃貸で借主負担になるものとならないものを比べた図。
賃貸でできることの範囲(借主負担になる度合い)。緑は通常損耗として貸主負担になりうるもの。赤は借主負担。

戻せる範囲の外枠を決めているのは、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」と、2020年4月1日に施行された改正民法の2つです。改正民法では、通常損耗や経年変化について賃借人が原状回復義務を負わないことが明文化されました。ガイドラインは1998年に公表され、2004年と2011年に改訂されています。壁の穴がどちら側の負担になるかという線引きは、原状回復そのものを主題にしたページの側で、ガイドラインの区分に沿って扱います。

賃貸で手を入れられる範囲は、3つに分かれる

賃貸で手を入れられる範囲は、壁や床に何を残すかで3つに分かれます。上から順に、跡が残らないもの、跡が残るかどうかが施工と下地で変わるもの、確実に跡が残るものです。

  • 置く。家具、ラグ、間仕切りの棚。床と壁に何も残らないので、寸法だけで判断できます。
  • 掛ける・貼る。カーテン、はがせる素材のシート。跡が残るかどうかは下地の材質で変わるため、目立たない場所で先に試します。
  • 穴を開ける。棚受け、ウォールフック、テレビの壁掛け。ガイドラインは小さな画鋲の穴を通常損耗の側に置いていますが、ネジやアンカーの穴はそれより大きく、扱いが変わります。

この3つのうち、賃貸のインテリアで使える面積がいちばん大きいのは1番目です。壁を触らずに部屋の見え方を変えたいなら、変えるのは壁ではなく家具配置になります。

家具配置は、畳の規格と通路幅の引き算で決まる

家具配置を決める前に必要な数字は、部屋の実寸と通路幅の2つだけです。「6畳」という表記は規格によって面積が違い、不動産広告の畳数表記には地域により最大およそ26%の面積差があります。

規格1畳6畳の実寸6畳の面積
京間0.955 × 1.910m2.865 × 3.820m10.94m²
中京間0.910 × 1.820m2.730 × 3.640m9.93m²
江戸間0.880 × 1.760m2.640 × 3.520m9.29m²
団地間0.850 × 1.700m2.550 × 3.400m8.67m²

そこから引くのが通路幅です。大人が1人通るには60cm、物を持って歩くなら75cm、2人がすれ違うには1人が横向きになって90cm。家具と家具のあいだは最低60cm、目安は60〜90cm、理想は75cm以上とされます。ダイニングでは天板の縁から75cmあれば椅子を引いても壁に当たらず、その後ろを横歩きで通れます。座った人の後ろをまっすぐ歩かせるなら90cmです。江戸間の6畳に幅120cmのセミダブルを長辺沿いに置くと、短辺の2.64mのうち残りは1.44m。ここから通路の60cmを引いた84cmが、反対側に置ける家具の奥行きの上限です。

1Kや1LDK、一人暮らしの部屋で最初に位置が決まるのは、たいていベッドです。シングルの幅は97cm、セミシングルは85cm、セミダブルは120cm、ダブルは140cmで、長さはいずれも約195cmあります。江戸間の6畳にダブルを長辺沿いに置けば、短辺2.64mの残りは1.24m。通路の60cmを引くと、反対側に使えるのは64cmです。対面キッチンやカウンターキッチンのある部屋では、カウンターの前に人が立つ幅も要るため、その分をダイニング側の通路から引きます。

賃貸で借主負担になるものとならないものを比べた図。
賃貸でできることの範囲(借主負担になる度合い)。緑は通常損耗として貸主負担になりうるもの。赤は借主負担。

壁を触らずに変えられるもの

壁を触らずに変えられるのは、色、素材、そして視線が抜ける方向の3つです。和モダン、北欧、ジャパンディといった呼び名は、いずれも素材と色の組み合わせに付いた名前で、工事を必要としません。木の面材の割合を増やす、布の色を2色までにそろえる、家具の高さを1枚の平面にそろえる。3つ目は数字で言えます。座面40cm前後のソファに合わせるローテーブルは、くつろぐためなら35〜45cm、そこで食事もするなら67〜70cm。椅子で使う部屋なら、高さ70cm前後のテーブルに座面40cm前後の椅子を合わせ、差尺を27〜30cmに収めます。どちらか一方に寄せるだけで、工事をせずに部屋の高さがそろいます。

狭い部屋、古い部屋、天井が高い部屋でも、判断の順番は変わりません。先に測り、通路を引き、残りに何が入るかを見ます。1LDKでも1Kでも、居室と通路の関係は同じ引き算です。

視線が抜ける方向も、家具の高さで変わります。窓とその手前の床を塞がないように置くと、部屋の長辺方向がそのまま見通せます。天井が高い部屋では、見通しに加えて壁の上半分が余るため、掛けるものの位置を高く取れます。

シミュレーションと実例の使い方

家具配置のシミュレーションは、実寸を入れてから意味を持ちます。入力する前に測っておく数字は3つです。

  1. 部屋の内寸を、巾木を避けた高さで壁から壁まで測ります。
  2. 扉、窓、クローゼットの開口部の位置と幅、開く向きを図に写します。
  3. 梁、柱、配管の出っ張りの奥行きを控えます。

実例の写真は、寸法が書かれていないかぎり自分の部屋には移せません。同じ配置に見えても、京間の6畳と団地間の6畳では床面積が2.27m²違います。参考にするなら、写真ではなく寸法の入った図を見ます。

ガイドラインが決めていること、決めていないこと

原状回復のガイドラインが決めているのは、退去時の費用をどちらが負担するかの考え方であって、住んでいるあいだに部屋へ何をしてよいかではありません。国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」は1998年(平成10年)に公表され、2004年(平成16年)と2011年(平成23年)に改訂されました。現行は再改訂版です。

時期できごと
1998年(平成10年)国土交通省がガイドラインを公表
2004年(平成16年)改訂
2011年(平成23年)再改訂。これが現行版
2020年4月1日改正民法施行。通常損耗・経年変化は賃借人の原状回復義務の外と明文化

壁の穴については、ガイドラインは小さな画鋲の穴を通常損耗(賃貸人負担)の側に置き、大きな穴や破れを賃借人負担の側に置いています。ネジやアンカーの穴を独立した項目として挙げているわけではありません。ネジ穴は画鋲の穴より大きく、実務では賃借人の負担として扱われることが多いのですが、それはガイドラインが名指しで書いていることではなく、一般的な読み方です。ガイドラインの言葉にないものを、ガイドラインが決めたことのように読まないほうが安全です。

そのうえで、手元の賃貸借契約書に特約が付いていることがあります。特約はガイドラインとは別に効くので、壁に何かを留める前に見る順番は、ガイドラインより先に契約書です。棚受けやウォールフック、テレビの壁掛けのように下地へ荷重をかけるものは、穴の大きさだけでなく下地の材質も関わるため、この2つを確認したうえで判断することになります。原状回復を主題にしたページの側で決まるのは、開けようとしている穴が「小さな画鋲の穴」と「大きな穴や破れ」のどちらに寄るか、そしてその判断を退去の何か月前にしておくかです。

コーディネートを依頼するときに、先に用意するもの

インテリアコーディネートを依頼するとき、先に用意しておくと相談が具体的になるものは4つです。

  1. 部屋の実寸を書き込んだ間取り図を用意します。
  2. 賃貸借契約書から、原状回復と特約に関する条項を抜き出します。
  3. 動かせない家具と、買い替えてよい家具を分けます。
  4. いま収納に入っているものの量を数えます。

コーディネーターに渡す情報のうち、いちばん効くのは実寸です。写真は雰囲気を伝えますが、寸法は入るか入らないかを決めます。

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